スポーツ史資料 : アウグスブルクの自由射的祭(1509年)への招待状
Year: 1992
Type: article
Abstract: スポーツ史研究 第5号(平成4年) 43 研究ノ-ト スポーツ史資料:アウグスブルクの自由射的祭(1509年) への招待状 橋戸一彦(広島大学) I.はじめに 15-16世紀におけるドイツの諸都市では,いわ ゆる「自由射的祭(FreischieBen)」がしばしば開 催された。この射的祭は「参加費を納めた誰でも, この競技に参加できる」という意味で「自由」で あったり。自由射的祭は都市当局によって,あるい は都市当局の援助を受けた射手団体によって,主 として他都市との友好を目的として開催され,開 催都市の射手だけでなく他の都市の射手も参加し て,さまざまな賞品を賭けて,考や銃による射撃 の技量を競い合う射撃戟技大会(SchieBspiel)で あった。しかも,この競技大会では.同時に走・挑・・投などの余興(Kurzweil)や富くじも実施さ れた。射撃競技だけでなく他のスポーツ競技や.更には様々な癖楽も開催された自由射的祭は,正 に,当時のドイツの都市における「最大の民衆祭 (Volksfest)」であった2)0 このような自由射的祭の歴史像を構築するため の直接的な史料としては,次のような史料を挙げ ることができる: 1)都市参事会あるいは射手団体 が射的祭の開催を案内した「射手状」, 2)射的祭 の経過を参事会の書記が記録した「公的文書」 (参 加者目録,入賞者目録,競技記録,賞品目録な ど), 3)都市会計帳簿における射的祭に関する支 也, 4)年代記における記録, 5)射的祭に参加した 道化師が作成した詩,あるいは6)射的祭の会場 の様子を描いた銅版画,更には7)標的,考,銃な どの物的資料,など。 これらの史料の中で.都市の印章をつけた「公文書」である射手状血 当時の射撃競技における 内容と方法を知る上で最も重要な史料の一つであ る。というのは, 15世紀後半から16世紀に作成 された射手状のテキストを分析すると,多くの射 手状が次のような内容から構成されているからで ある: 1)挨拶, 2)射的祭の賞品(賞品の数と価値, 遠来賞,命中賞,騎士射撃の賞品など), 3)閑始の 日時, 4)参加費, 5)標的までの距離, 6)標的の大 きさ, 7)射撃の数.8)矢の検査, 9)射撃規定と罰 刺. 10)命中数に応じた賞品の分配, ll)武器破損 の際の規則, 12)奴技委員会(「七人衆」 「書記」 「標的係り」など)の選出と任務, 13)その他の余 輿(競馬,競走,跳躍,石投げ,九柱戯,格闘な ど)の競技方法と賞品, 14)富くじの方法と賞品, 15)自由通行権の保証, 16)射手の派通依頼, 17) 招待状の流布-の要請,など3)0 ところで,自由射的祭の開催を決定した都市 は,賞品や親技の内容と方法など祭のプログラ ムを案内する文書,つまり「射手状(Schutzenbrief)」を諸都市に届けた4)。しかも,射手状には 招待する都市の印章が吊り下げられており,従っ てこの書状は開催都市の「公文書」でもあった。 この射手状には「招待状(Einladungsbrief)」の形 式をとるもの(以下では「射手招待状」と呼ぶ) と, 「目録(Verzeichnis)」の形式をとるもの(以 下では「競技目録」と呼ぶ)とがある。前者は射 的祭を開催する都市の参事会.あるいは参事会の援助を受けて射的祭を開催する射手団体が,招待 する都市の参事会あるいは射手団体に宛てて出す 招待状の形式をとっている。従来の自由射的祭研
Author: Kazuhiko Kusudo
Language: Japanese
Subfield: Sociology and Political Science
Field: Social Sciences
Domain: Social Sciences
Open Access status: green
OpenAlex ID: W2963431
